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不動産購入による節税について(タワーマンション編)

不動産購入による節税について(タワーマンション編)

 

タワーマンションを使った節税は富裕層を中心に以前より行われていましたが、これを争った判決が令和4419日、最高裁第三小法廷で下されました。

この最高裁判決を受けて、問い合わせを頂くことも増えてきましたので改めて判決内容を検証して見ようと思います。

 

原告は相続が開始する3年程前に約138700万円でタワーマンション2棟を購入し、遺産相続時に財産評価基本通達に基づき、タワーマンション2棟を約33千万円と評価して相続税の申告を行いました。他にも財産があったと思われますが、タワーマンション購入資金を借入金で調達していたため、相続時の債務を控除すると課税価格は0円となりました。国税当局はこれを行き過ぎた節税として鑑定評価額の127300万円で更正処分を行いました。通達に沿って申告したにも関わらず、国税当局はなぜ更正処分を行うことが出来たのでしょうか?

 

財産評価基本通達6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と書かれています。つまり、固定資産税評価額や路線価等を使って適正に評価したにも関わらず、その評価額が結果的に低くなり過ぎたので、これでは課税の公平性を保つことが出来ず、著しく不適当であり、鑑定評価を行って時価で課税しますという超法規的な例外規定を適用したということになります。

 

通常、通達主義と言われるように財産評価基本通達に評価を行うことは国税局、税務署では絶対的な立場であり、鑑定評価より必ず先ずは通達により評価することになっています。納税者の立場からすると原則通り通達に従って申告したにも関わらず、更正されるのは基準が曖昧であり、この更正処分を不服として控訴を行いましたが、最終的には最高裁まで争われて原告の敗訴が確定しました。

 

今回の事例のポイントは主に4点挙げると次のとおりです。

 

     相続開始前の3年以内に購入したものであること

相続税では3年内贈与加算など3年と言うワードが良く使われます。過去には相続前3年以内で取得した不動産は時価で課税すると言うものもありましたが、相続開始直前(特に相続前3年)に行われたものは行き過ぎた節税として見られる可能性があります。

 

     鑑定評価額の3割以下の評価額まで下げて申告したこと。

本件では購入価額及び鑑定評価額の2割~3割程度の評価額で申告しております。

バブルの頃では相続税評価額が実際の時価額の3割程度まで乖離することは普通にあったと言われております。国税当局もこれでは課税の公平が保てないとなり、平成3年に路線価を時価の7割、平成4年からは路線価を時価の8割程度を目途とされるようになっております。鑑定時価の3割以下になったと言うこともポイントの一つでしょう

 

     相続直後に売却していること

本件事例はタワーマンション2棟の内、1棟を購入価格(55000万円)とそれ程変わらない価格(51千万円)で相続税の申告期限迄に売却しております。国税当局が動いた要因でこれが一番大きいのではないでしょうか。売却したタワーマンションの申告額は1億3000万円とのことであったため申告額の4倍近い金額で売却しております。ちょっと目立ち過ぎてしまったと思います。

 

     総資産価額及び購入金額が多額であること。

相続税の場合は通常、5年から10年間は預金の動きは調べていると思っていた方が良いと思います。また借入金の額が多い場合も借入金の使途、つまり反対の財産として適切に反映されているかもチェックのポイントになります。本事例では14億近いタワーマンションが購入出来る本来であれば多額な相続税がかかるべき人が相続直前、直後に極端な相続税対策を行内、相続税を0円としたことが、著しく不適当と判断されたのでしょう。

 

この判決を受けてマンションを購入された方から心配になり相談を受けることが増えて来ましたが、本事例は以上のようにいくつもの要因により、例外的な判断がなされたものであり、不動産の購入による節税が一概に否認されるものではありませんので、上記4点に注意して早めの対策を行うことが重要です。