相続登記の義務化について
今回は相続登記の義務化についてお話したいと思います。
現在の法律では不動産の所有権等の登記は必ず行わなければならないものではなく、個人の判断に委ねられています。このため今後、売却するなどの予定がない場合は相続が発生した後も長年、先代名義のまま放置されるということもありました。
相続登記には所有者の名前だけではなく、住所も記載されているため、先代名義のままで住所変更もされていると、所有者不明の土地が増えてしまい空き家問題と並んで大きな社会問題となっています。現在では九州の面積を超えるくらいの土地について相続登記がされず所有者不明となっている状態です。
また、この所有者不明土地の問題は2011年の東日本大震災の復興を大きく妨げた原因とも言われております。
これを解消するために今国会で民法や不動産登記法の改正案が令和3年4月に衆議院、参議員全会一致で可決されました。
この法案によると相続登記は原則相続開始を知った日から3年以内に行わなければならず、違反した者には10万円程度の過料を科すこととなっています。
この他にも一定の要件で所有者不明の土地を国に帰属させる相続土地国庫帰属法案も同時に可決されました。この法案は2023年度に施行される見込みです。
次に不動産の相続登記を行っていない場合に生ずる問題を列挙しますと主に次のとおりです。
① 相続人関係が複雑になり相続人の数が増えて、全ての相続人全員が印鑑証明書をつけて遺産分割協議書に押印しなければならない。
② 相続登記が完了するまでは不動産を売却することも賃貸することも出来ない。
③ 固定資産税は代表者が負担しなければならない。
④ 相続人に二次相続が発生した場合、余分な相続税を負担しなければならない。
その他にも様々なデメリットがありますが、例えば、住み続けている自宅の相続登記を怠ったまま、配偶者などの二次相続が発生した場合、二次相続登記を省略して子に相続登記をしたため、空き家となった自宅を売却した際の3000万円の特別控除を受けることが出来なくなってしまうなどのケースも実務では良く見られます。
多くの税理士は相続税の申告を作成した場合には、国税庁HPに掲載のある「相続税の申告のためのチェックシート」を活用して、申告に誤りがないかチェックを行います。
このチェックシートの最初には「未登記物件、共有物件、先代名義の物件等はありませんか」という項目があります。
相続登記の義務化に伴い、過去の相続登記が今後、加速していくと思われます。問題の解決に向かうことは良いことですが、同時に国税当局も先代名義の不動産についても着目して、
課税を厳格に行う可能性もありますので、二次相続等が発生するまでになるべく解決することが望ましいでしょう。
当事務所では遺産分割協議書作成のほか司法書士とも連携して相続手続きの支援を行っておりますので、お気軽にご相談下さい。