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小規模宅地等の特例(税制改正の流れ)

小規模宅地等の特例(税制改正の流れ)

 

今回は小規模宅地等の特例について過去の変遷から最新の改正まで解説いたします。

小規模宅地等の特例とは簡単に言いますと、被相続人(亡くなった人)が相続時に住んでいた自宅敷地や事業を行っていた宅地について、相続人が引き続き居住したり事業承継をする場合、今後の安定的な居住や事業の継続の保護を目的として、一定の面積まで最大で80%の評価を減額しますというと言うものです。評価額を80%減額できるとなれば、特例適用の可否により、税額も大きく変動することになります。小規模宅地等の特例は数年ごとに改正されますので古い知識ですと誤った認識となってしまいますので注意しましょう。

 

それでは知識の整理のため、近年の主な小規模宅地に関する改正を見ていきます。

○平成25年税制改正(平成27年1月1日以降の相続に適用)

近年では一番大きな税制改正になります。大きく分けると以下のとおり4つの改正に分けられます。

     特定居住用宅地等の特例適用面積の拡充

改正以前は特定居住用宅地等の限度面積は240㎡ですが、改正後は330㎡まで拡充されました。減額される割合は80%のまま変わりません。

 

     限度面積要件の緩和

特定居住用宅地等の特例(330㎡まで80%減額)と特定事業用宅地等の特例(400㎡まで80%減額)が完全併用可能となり最大で730㎡の宅地まで80%減額が可能になりました。

 

     二世帯住宅の敷地の取り扱いの明確化

改正以前は外階段で玄関が別々にあるような二世帯住宅は被相続人が居住している部分の宅地だけに特例の適用がありましたが、改正後は内部で行き来が出来るか否かに関わらず、敷地全体を被相続人が居住していた宅地として特例が可能になりました。

但し、区分所有登記(マンション等に見られる登記)がされている2世帯住宅は被相続人の居住部部分だけに限られます。

 

     老人ホームに入居している場合の適用

介護保険法に規定する要介護認定や要支援認定を受けた方が、老人ホーム等に入居したことにより自宅に居住しなくなった場合も老人ホーム等に入居前の居住地に特定居住用宅地等の適用がされることになりました。

 

平成25年改正では同時に相続税の基礎控除の引き下げによる相続税の課税ベース引き上げとセットになっているため、これを考慮し適用の範囲が広がったと言えます。

 

平成25年の税制改正(平成27年以降相続適用)により、相続税の申告件数は約2倍になっております。この頃より相続税が注目されるようになり、節税もやや加熱気味になってきました。これを防止するため、以下のとおり小規模宅地等の平成30年改正が行われました。

 

○平成30年税制改正

 

     持家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の見直し

 

すこし説明を加えなければいけませんが、相続人が相続前過去3年間に自己又は配偶者の持家に居住していない者は税法上、「家なき子」と呼ばれており、被相続人と同居していない場合でも特定居住用の小規模宅地等が可能となっていました。

 

近年、相続人が自分の持家があるに関わらず、親族や同族法人に名義を移して「家なき子」の状況を作り出して小規模宅地等の特例を適用するという過度な節税が見られるようになってきました。これを防止するため、相続開始時点で住んでいた相続人の自宅が過去にその相続人の名義になっていた場合やその相続人の3親等内親族や特別の関係のある法人名義となっていた場合もこの「家なき子」から除くとされたものです。

 

     貸付事業宅地の範囲の見直し

相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地が特例から除外されました。

 

この背景は前述した「家なき子」同様に不動産を使った節税が過熱したことも挙げられます。例えば今では少し沈静化していますが、相続の節税にはタワーマンションを購入する節税があります。例えば2億円の預金を持っていた者がその預金でタワーマンションを購入したとします。財産は預金からマンションに変わった時点で評価額はかなり下がります。タワーマンションの場合、固定資産税評価額はどの階でも㎡単価は同じになりますが、実勢価格は高層階の方がかなり高くなりますので高層階ほど節税になる訳です。また、このマンションを貸し付けることにより、マンション価格は貸家評価になり3割減少し、マンション敷地も貸家建付地評価になり評価額を更に下げることができます。これに加えてこの貸付事業用宅地も適用できるとなるとマンション評価額は購入価格の2割程度になることも珍しくありません。安い評価額となったところで相続が発生し、相続税を払った後に売却したとしても、都心部のタワーマンションであれば購入価格とさして変わらない価格(場合によっては値上がりして)売却できることもあります。

これに債務を組み合わせるなどして様々な相続対策が過熱しましたが、これに待ったをかける形で、貸付事業用宅地は相続前3年以内に事業を始めた場合は行き過ぎた節税として小規模宅地等の範囲から除外したものです。但し急な改正ですので特例として令和2331日以前の相続開始の場合は改正前の法律が適用されますが、令和3年以降の相続は過去3年以内に貸付事業を行った場合は適用されません。

 

 

このように小規模宅地等の特例は相続税の増税に伴い適用範囲を広げ、次は節税が行き過ぎとみると適用範囲を除外するなど、税法(措置法)は時と共に変化していきますので、相続対策は今後の税制改正の流れを見ながら慎重に行いましょう。

 

小規模宅地等の適用相談も初回無料で行っておりますのでメール等でもお気軽にお問い合わせください。