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手持現金(タンス預金)の申告について

手持現金(タンス預金)の申告について

 

相続税申告に多く携わっていますと、必ず現金をいくらで申告するかという問題に直面します。相続発生後、預金が凍結される前に葬儀費用程度の現金(タンス預金)は手元に置いておきたいという気持ちは良く分かります。

ただし現金なら分からないだろうとか、預貯金の残高を少なくしようと安易な考えで多額な現金を引き出してしまうことは極力控えた方がよいでしょう。

 

なぜなら、多額な現金を引き出した場合は必ず税務署が着目しますので、税務調査を受けるリスクが高まるからです。「現金ならば誰がどのように使ったか分からないのでは?」と思われるかもしれませんが、銀行窓口で預金を引き出した場合は出金伝票の筆跡で誰が引き出した行為者か判別されますし、ATMで少しずつ引き出したとしても防犯カメラのデータを復元することで引き出した行為者を特定することが出来るからです。

 

相続税の税務調査では被相続人の生前の生活状況、特に入院していた場合はどこの病院に入院し、入院期間や病状(外出可能か否か等)などについて詳しく聞かれます。これは生前の被相続人の財産管理の関与状況を確認するためです。例えば税務調査において相続人は「預金通帳やカードは見たことがないので分からない」と答えたとしても、亡くなられた方が入院している期間中にその方の預金が引き出されていると矛盾が生じてしまいます。

このように税務調査では最初の聞き取り調査で外堀を埋めつつ、後で確信を突いて質問をしてきますので、誤魔化そうとしても追求に耐えられなくなってしまうケースが多いのです。

例えば相続税調査では「生前に贈与はありましたか?」という質問がよくされますが、かなりの割合で「贈与はありませんでした」という回答が返ってきます。この場合、税務署は相続人への預金シフトを確認していて質問している場合があり、税務署員は内心ではシメシメと思っていることも多いのです。

なぜなら生前贈与がなかったのであれば、相続人へシフトした預金は相続人のものではなく、亡くなられた方のもの(いわゆる名義預金)になります。これは民法により贈与とは贈与した人が財産を無償で与える意思表示をして、財産を貰った人の受諾があって成立するものだからです。

 

贈与の場合は時効がありますが、名義預金の場合は時効がなく相続人名義の預金残高全部を相続財産として認定されて多額な追徴課税を受けてしまう可能性があります。

このように聞き取り調査で外堀を埋めるように質問をされますので、現金についても隠しきれなくなってしまいます。

 

また、現金保管は相続人間で争いの火種にもなりかねません。

相続人間で争いがあるケースの相談では例えば1000万円の財産をどのように分けるかではなく、「もっと財産があるはずだ」というものが非常に多いです。10の財産を64で分けるとしても、そもそも財産は20以上あるとなれば話がまとまらなくなってしまいます。

 

実は現金引出しの理由は前述した「現金であれば税務署に分からないだろう」という税負担を理由とするものより、他の相続人に財産を渡したくないという理由の方が以外と多いのです。特に親の介護などをしてきて晩年に通帳やカードを預かっていた場合は、親の面倒を見ていない相続人に財産を渡したくないという思いからこのようにしてしまうこともあるのでしょう。

 

この場合は結果的には税務調査でも指摘され追徴課税と重加算税が賦課された上、他の相続人にも説明する責任が生じることになり、多大なストレスになりますので絶対に避けるべきです。

 

最後に2024年より新一万円札が福沢諭吉から大河ドラマでも始まった渋沢栄一に代わりますね。新札に刷新する理由のひとつにマネーロンダリン防止やタンス預金のあぶり出しの意味合いもあります。新札への交換は手数料もかかりますし、匿名ではできませんので、今後は現金によらない正しい節税や相続対策を考えていきましょう。

 

もし相続が近いもしくは相続は発生しいて多額な現金保管がある場合の相談は相続専門の税理士に相談することお勧めします。出来る限りの円満な解決方法をご提案します。