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住宅取得資金贈与(住宅取得が遅延する場合)

 11月になって徐々に冬らしい空気に変わりつつありますが、新型コロナウイルスの感染者も増加傾向にあり流行の第三派の局面となってきております。そろそろ来年の確定申告はどうなるか気になりますね。

今回は贈与税の住宅取得資金の贈与特例の様々な期限にスポットを当ててみたいと思います。前回のお知らせ記事にも記載しましたとおり、贈与特例の期限は厳格に定められております。この住宅取得資金贈与についても贈与された金銭が住宅取得に充てられたことを明確にするために、贈与を受けた翌年の315日までに建物を取得(棟上げの状態)することが要件になっております。今までは住宅メーカーの事情で建物の引渡しが遅れたとしても、救済措置はなく、特例非該当となり高額な贈与税を支払うことになったということもありました。

 最近の情勢では建築資材は海外から入りにくくなっており、人手不足も相まって、完成引渡し期日が遅れるケースもありそうですね。

 

 このようなこともあり、現在では新型コロナウイルスの影響で建築が遅れた場合には国税庁のFAQで以下のような回答が示されております。

    

 <贈与税に関する取扱い>

 問 13.《住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例における取得期限等の延長について》〔4月 30 日追加〕

 

1:住宅取得等資金の非課税の特例について、次の場合に該当し、期限までに住宅の取得又は居住ができなかった場合でも適用を受けることはできますか。

① 令和元年に父から住宅資金の贈与を受けて、家屋の棟上げまで工事が終了し、令和2年 1231 日までに居住する見込みであるとして、この特例の適用を受けて

贈与税の申告を行ったが、新型コロナウイルス感染症の影響により住宅の新築工事の工期が延長され同日までに居住できなかった場合

② 令和2年1月に母から贈与を受けた住宅資金について特例の適用を受ける予定であり、令和3年3月 15 日までに住宅を新築する見込みであったが、新型コロナウ

イルス感染症の影響により工事の工期が延長され、同日までに工事が完了できない場合

 

A1: 「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」の適用を受けるためには、取得期限(贈与を受けた年の翌年 315 日)までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築(いわゆる棟上げまで工事が了している状態を含みます。)又は取得等をし、居住期限(同年 1231 日)までにその家屋に居住する必要があります。

ただし、「災害に基因するやむを得ない事情」により、取得期限までに新築等ができなかった場合又は居住期限までに居住ができなかった場合には、それぞれの期限が1年延長され、特例の適用を受けることができます(租税特別措置法 70 条の2第 10 項、第 11 項)。

今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、例えば、緊急事態宣言などによる感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し、資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工事が施行できず工期が延長される場合など、新型コロナウイルス感染症の影響により生じた自己の責めに帰さない事由については、「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものと認められます。

  したがって、お尋ねの場合が、上記のやむを得ない事情に該当するときは、 ①の場合については、居住期限の延長がされますので、その延長後の居住期限(令和

3年 1231 日)までにその家屋に居住すれば、この特例の適用を受けることができます。

 ②の場合については、取得期限と居住期限が延長されますので、その延長後の取得期限(令和4年3月 15 日)までにその家屋を取得し、延長後の居住期限(令和4年 1231 日)までにその家屋に居住すれば、この特例の適用を受けることができます。

 

以上のとおり、従前よりかなり柔軟な対応になりそうですが、やはり災害に起因する、やむ得ない事情ということですので、なんでも期限延長を認めているということではないことにご注意ください。令和2年分の確定申告期限も含めて今後の国税庁の情報は注視しておきたいですね。申告期限延長等の詳細は税務署に確認するか、贈与税に詳しい相続税専門の税理士にお尋ねください。