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不当利得返還請求にご注意を!

不当利得返還請求にならないようにご注意を!

 

段々と秋も深まり、紅葉もちらほら深まりりつつあります。気が付けばもうもう11月ですね。11月といえば相続税の税務調査の最盛期の終盤戦迎えることになります。

 

 前回の税務調査対策でも記載しましたが、税務調査の対象となりやすい事案はやはり生前に現金の引出しが多い相続事案になります。

 

預金の管理については亡くなられた方ご本人が預金の引出しをされる場合もありますし、晩年は相続人の方が委任を受けて預金通帳を預かり、生活費、医療費及び介護費用などを代理で支払うケースもあると思います。

 

例えば被相続人の口座から100万円の現金を引き出して長男の口座に100万円を入金したという行為があったとします。単純に考えると預金名義がAさんからBさんに変わったのだから一般的には贈与と考えるケースが多いと思います。しかし相続専門の税理士は行為者が誰かによって次の3パターンを考えます。

 

     被相続人が管理している長男名義の通帳に被相続人が預け入れた。

     被相続人は長男に贈与する旨の意思を表示して合意の上で長男の口座に入金した。

     被相続人から預かっていた口座から合意のないまま引出し、長男の口座に入金した。

 

     のケースはいわゆる名義預金であり、長男との間に贈与契約は成立していないので名義上は長男のものですが、実質的な所有権は被相続人のままです。名義預金に関しては別の記事で記載しておりますのでご参照ください。

 

     のケースは一般的な贈与が成立するケースとなります。民法で規定するように当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示して相手方が受諾することにより効力を発生します。口頭でも成立しますが、書面で残しておくと更に確実に贈与の事実を証明できるので相続対策として有効です。

     のケースは問題となりやすいケースです。例えば長男が病院の支払や介護費用を立替えていた場合に後日まとめて口座に入金する場合なども考えられますが、この場合は立替えた実績などを領収証などで残して立替えであることを証明する必要があります。

 

このほかにも例えば生前に両親と将来の住宅の購入資金や孫の学費は出してあげると口約束をしていたけど、その後に両親が認知症になってしまった場合や病状などにより贈与の意思行為そのものができなくなってしまうこともあります。そうなると口約束通り住宅の購入資金や孫の学費に使ったとしても、他の長男以外の相続人からすると勝手に合意のないまま親の預金を引き出したということになってしまいます。

 

この場合、贈与は成立していませんので不当利得の返還義務を被相続人(親等)に対して負うことになってしまい、他の相続人からして見ると不当利得の返還請求権という財産を相続財産として加えないといけないことにもなりかねませんし、遺産分割の争族の原因にもなりかねません。

 

当事務所ではこのように過去の預金の動きで判断に迷う場合などは相続税調査に精通した相続専門の税理士が過去の預金通帳について5年間程度(場合によっては7年又は10年)の動きを精査し、事実関係について相談に乗りながら相続人の皆様が納得できる申告書を作成しております。

 

相続税というものは被相続人の財産を亡くなられたこと期に一生の清算をするという税金という意味もございます。このように過去の預金履歴から現在までたどることで正しく相続財産を把握できるほか、相続人全員が納得できるような円満相続、遺産分割にも繋がります。

 

生前の贈与対策や名義預金の解決方法など生前対策も受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。