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名義預金の課税について

 

名義預金の課税について

 

少しづづ秋らしくなってきましたが、日中はまだ暑かったり、寒暖差もあるので体調管理に気を付けないといけない季節ですね。

 今回は税務調査対策に引き続き、名義預金の相続税の課税についてのお話をしたいと思います。名義預金とはどのようなものかと言いますと「その預金の名義となっている人が実際に預金している物ではなく、その名義人の名義によって別の者が預金をして管理している物。つまり預金通帳等の支配権が名義人になく、贈与の履行が完了されていない預金のこと」を言います。

 

銀行での本人確認が厳しくなってからは、この名義預金の状態は減っていると思いますが、相続の現場を多く見てきた立場からすると、世帯主やその配偶者の方が家族の名義の預金を家全体の預貯金として管理しているケースが未だに見られるものです。税務調査などでは、直近5年程度では実際の預金の動きがなくても、相続人等の生前の収入では貯められないほどの預金残高がある場合は調査選定に上がりやすくなります。

 

また、毎年110万円づづ子供や孫の名義の金融機関に預け入れている場合は、問題がないのではと思われている方も多いと思います。しかし安易に110万円以内であれば大丈夫という考え方は時には危ないこともあります。

 

名義預金や名財産の主な判定要素は多くの裁判例で争われていますが、具体的に挙げますと次のとおりとなります。

     その預金の出捐者(誰のお金で作成されたか)

     通帳、印鑑、キャッシュカードの保有者は誰か

     その財産を運用し、その利益の享受を受けている人は誰か

     生前に贈与がされたものか否か

 

上記の内で、特に誤解が多いのは贈与がされたものか否かについてです。

勿論「110万円以内であれば贈与税も相続税も関係ないんじゃないの?」言われるかもしれませんが、ポイントは上記④の「贈与がされたものか」という点です。

 

贈与とは民法549条で規定するとおり、「ある財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受諾することによって成り立つ片務・諾成・無償の契約」となっております。つまり相手方(貰う人)が受諾していない場合は贈与契約が成立していないことになります。毎年110万円を子供や孫の預金に預け入れていても、貰った側が「贈与してくれてありがとう」などとその贈与について受諾していない場合は贈与契約が成立していないことになります。そうなると名義だけが子や孫のもので、相続税の考え方によると所有権という意味では完全に移転していないことになってしまいますので、名義預金と判定されて亡くなられた方の相続財産として課税されてしまうことになってしまいます。

 

このようなケースを避けるためには、書面で贈与する旨を記載した贈与契約書を作成しておくことも有効になります。例えば受贈者である孫等が未成年であれば、その親が代理人として契約することも可能です。

 また110万円以上の贈与をあえて行い、税務署に申告をしておくのも有効な手段になります。更に111万円を贈与して1000円だけ納税(110万円の控除と10%の税率で計算)するという方もいます。(これには賛否もありますが、申告を行ったという事実は贈与の証拠としては大きいと考えます)

 

このように、贈与申告を行っていないと税務調査では名義預金としてだけでなく、貸付金や立替金、預け金など様々な名目で課税を受けることがあり、この場合は贈与税の6年の時効も適用されないので、過去に遡って多額の追徴課税を受けることもありますので気を付けなければなりません。相続税を見据えて計画的に贈与を行い、正しく申告しておくことが、結果的に節税に繋がることになってきます。

 

以上のように名義預金や贈与の判断にお困りでしたら、税務調査対策も万全な相続専門税理士にお気軽にお尋ねください。