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相続税の税務調査対策(前編)

今年はお盆を過ぎても各地で40度近い猛暑日の連続ですね。マスク着用や室内との温度差もあって毎日疲労が蓄積されますね。

 

ところで8月のお盆を過ぎた頃から秋にかけては税務署では1年間の中で調査最盛期と言われております。今年は新型コロナウイルスの影響で税務調査も大きく制限されているのではないかと推測されますが、この時期にも着々と税務調査の準備が行われており、今後のコロナ収束後は一気に相続税の税務調査が増加するのではないかと思います。今回は相続税の税務調査について記載したいと思います。

 

ちなみに名古屋国税局の記者発表資料を確認すると平成30年中に名古屋国税局管内(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)で亡くなった人は154,767人でした。この内で相続税の申告が必要な方は亡くなった人を基準で数えて17,480人となっており、東海4県では約11.3%の方が相続税の申告を行ったことになります。地価の高い名古屋市などは更にこの割合が高いと思われます。

 

では、この17,480件の申告の内、どれだけの実地調査があったかというと1,924件が対象となっており、1,685件からは、なんらかの申告漏れがあったとされています。調査を受けた場合、約9割近くは修正申告等を行わなければならないのです。

またこのほかにも文書等での簡易的な接触による申告書の見直しも1,260件行われておりますので、全体では2割弱の方が何らかの相続税の税務調査等を受けた事になります。

 

更に、実地調査を受けた場合の1件あたりの平均申告漏れの課税価格は2,798万円で追徴税額は530万円となっています。ちなみに平成29年は平均申告漏れの課税価格は3,409万円で1件あたりの追徴税額は950万円となっています。勿論、あくまで平均値なので一部の超富裕層の高額な申告漏れが大きく影響していると考えられますが、実地調査を受けた場合の税負担は本税だけでなく、加算税や延滞税も加わりますので負担は重いですね。

 

次に、税務調査の連絡はいつあるかについてですが、可能性として申告期限から5年間、更に不正が見込まれる場合は申告期限から7年間は調査を受ける可能性があります。

但し、現実的に申告期限からから3年程度を経過(亡くなってから310ヶ月経過)すると余程の新しい事実がない限り、税務調査はほぼ無くなったと考えて良いでしょう。

さすがに時期的に古くなると税務署員も金融機関の資料の確認なども手間がかかったりするので調査もやりにくくなってしまいます。また限られた人員で新しく優先順位の高い事案も発生しますので、調査はなくなる可能性が徐々に高くなります。

思ったより長いと思う方も多いかも知れませんが、申告期限が10ヶ月あるのと調査までに申告書の審査などに係る時間を考慮すると亡くなった日から1年半~2年経過後が最も可能性のある時期になります。また確定申告時期である1月~4月及び税務署の人事異動の時期前の6月など調査件数は少なる傾向がありますので、調査終了までの時間を考えると調査連絡が入るタイミングは7月~10月頃が必然的に多くなります。この時期にないと更に翌年に繰り越される場合もあるので結果的に相続開始から3年後に調査ということもあることになります。

 

例として令和元年10月に亡くなった方の申告期限は令和28月になります。内部的審査

や資料収集の時間も考えると令和2年中に調査連絡が入る可能性は余程の特殊な事情が無い限りは少なく、調査連絡は令和3年以降に持ち越されます。更に確定申告期や人事異動期を避けると必然的に令和3年の7月~10月頃の可能性が高くなり、結果的には亡くなってから2年を経過した3回忌の頃に調査を受ける可能性が最も高くなります。

申告期限のかなり前に提出したから調査の連絡も早く来るのではと考えられる方もいるかと思いますが、基本的には死亡月で申告書を管理しているので、影響はないと考えた方が良いでしょう。

勿論、申告期限を前倒して提出した場合は、行政指導によって単純な誤り事項や添付資料不備は指摘してくれるので、期限内に訂正を済ませて余分な延滞税を払わなくて済んだということは有りますので余裕を持って申告されることは良いと思います。

 

税務調査は修正申告を終えて納税するまでに通常でも2ヶ月程度はかかり、長い場合は更に時間を要しますので精神的なストレスを生じることにも繋がります。

専門家に頼まず、相続人自身で作成した場合や、相続税の申告実績が少ない事務所に依頼すると思わぬ落とし穴があり、調査対象になりやすくなりますので、できれば相続税を専門としている税理士がいる事務所に依頼してなるべく税務調査を避けたいものです。