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相続税の税務調査対策(後編)

相続税の税務調査対策について(後編)

 

それでは税務調査を受けやすい相続申告はどのような方かというと、大きく例を上げると次のとおりとなります。

 

      被相続人の生前の職業や収入に比して申告された預貯金などの流動資産が少ない方

亡くなる近年では無職であったとしても過去の収入が高額であれば、申告すべき財産も高額であると予想されます。特に公示制度(いわゆる長者番付)があった平成15年以前に公示されていた方は当然に高額な財産があるのではないかと、推測されてしまいます。法人役員であった方、開業医の方、不動産の譲渡所得があった方などの資金移動が多い場合は申告作成時に注意が必要です。

 

      亡くなる前5年間で不明朗な現金出金が多い、又は家族間で預金のシフトがある方

ATMにおいて50万円単位で複数回の現金出金や数百万単位の現金出金がある場合も調査対象になりやすいです。税務調査に数多く立ち会った経験上、亡くなられた方が生前、病気や体調不良で入院されるなどのタイミングを期に財産管理を相続人に任せたり、生前中に相続人を集めて財産分けをすることがよくあります。このケースでは税負担を免れるというよりは、他の相続人には、知られたくないという思いから、不明朗な形での預金引出しを行って、税務調査において重加算税を賦課されてしまうというケースをよく見てきました。税務調査に入られると結果的には他の相続人にも知られてしまうので、このようなケースは避ければなりません。申告前に相続専門の税理士や場合によっては弁護士などに相談した方が良いケースもあります。

なお、相続税調査においては一般的には過去5年間くらいの預金の動きは確認しておりますが、高額の相続税事案になりますと過去10年遡ることもあります。

 

次に被相続人名義の預金を相続人の方が亡くなる直前に現金を引き出したにもかかわらず、現金申告が全く無いという事案も単純ではありますが調査対象になりやすいです。申告時にお葬式費用などに使って無くなってしまった場合でも相続開始日においては手持現金を保有していたことになりますので現金申告が必要となります。

最近では銀行は相続開始後でもお葬式費用程度の預金引出は応じてくれるようになっておりますので、相続トラブルにならないように慎重に行うことが必要です。

 

その他にも家族間で預金のシフトがあると贈与税の対象となるだけでは無く、その行為者や預金通帳の管理者等が亡くなられた方であった場合などは、いわゆる名義預金として相続財産の認定を受けてしまう場合もありますので要注意です。

 

      特殊な財産があると想定される場合

    金地金の売却歴がある方、過去に国外送受金を行っている方、書画骨董を保有している方、銀行に貸金庫を契約している方なども税務署は支払調書(法定資料)等により、様々な手法でデータ収集しておりますので、調査対象となりやすいと思われます。金地金や国外財産の申告漏れを把握した場合は財産の所在を分かりにくく隠匿したとして重加算税の対象にもなりやすいので、調査の優先順位も高くなります。

 

  当事務所では、税務調査対策として基本的には全事案に税理士法332項に基づく書面添付制度を利用して申告を行っております。勿論、書面添付を行ったから言って税務調査を全部避けられる訳では無いですが、税理士が納税者と税務署の間に入って不明点を出来る限るクリアにして、書面で事前に税務署に説明することで、申告書の精度と信頼性を高めることに繋がり、これにより税務調査のリスクを軽減いたします。更に正しい申告をすることで相続人間のトラブルを未然に防ぐこともできます。争族対策、税務調査対策を心配される方は、是非、相続専門税理士にご相談ください。