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相続時精算課税制度は使うべきか

 みなさんこんにちは。

先ほど特定警戒区域に指定されている愛知県の緊急事態宣言も514日で解除か?というニュースが入ってきました。徐々に経済活動は再開していく

事には賛成ですが、学校等は慌ただしいでしょうね。我が中学生の子達も5月末まで課題のプリントがタップリ出ているのでペース配分が変ってしま

いますね。

 

前回のテーマである配偶者居住権はまだ始まったばかりで、少し難しかったかもしれませんが、今回はもう少し身近な贈与の特例、「相続時精算課税制度」

ついて考えてみたいと思います。税制について理解するには創設された時代背景からその改正された趣旨を理解することが最も近道だと思いますので、

少し遡ってみます。

 

相続時精算課税制度は高齢世代から若年層への資産移転を促進し、住宅投資などを活性化させるため、相続税・贈与税を一体と考えて、贈与者1名につき

2500万円まで非課税とする一方で、贈与者について相続が発生した場合は贈与した時の時価で贈与された方の相続税の課税価格に上乗せするという制度で、

平成1511日に施行されました。

 

当時の相続税の基礎控除額は5000万円及び相続人1名につき1000万円ありました。この頃の相続税の課税割合は全国平均が4%台で、100人の方が亡くなっ

ても4人しか相続税はかからないというもので、相続税はいわゆる資産家のための税金でした。バブル崩壊から数年が経過したあの頃は、生前贈与は贈与税の

税率が高いから、相続まで待ったほうが良いかも・・という風潮もあったかもしれません。

このようなこともあっため、経済対策も含めて、高齢者世代から若年層に資産を移転させることを促進することを目的として創設されたものです。当時と

しては、相続税はかからないだろうから、遺産分けを早めにできるという一定のニーズがあったように思います。

 

時代は過ぎて、住宅取得についての贈与は一定の金額を非課税とする住宅取得資金の非課税の特例が平成21年に創設されます。過去にも宅取得資金贈与

には550万円までを非課税にするという制度がありましたが、これは五分五乗方式といって110万円の基礎控除を5年間先取りしたものであって、現在の

非課税制度とは全く異なるものです。

この住宅取得資金の非課税制度は毎年非課税枠を変えながら、現在では最大3000万円までを非課税枠として認められるようになりました。

この他にも教育資金の非課税制度は平成25年に創設され贈与者1名に最大1500万円までの一括贈与が非課税とされるようになっております。

 

一方、この間にも平成27年に相続税の基礎控除が5000万円から3000万円に引き下げられるなどした相続税の大改正を経て、相続税の課税割合は全国平均

8%(愛知県では14%程度)を超えるようになり、相続税は資産家だけの税金ではなくなってきました。

このように様々な税制改正があると当時は相続税なんて自分には関係がないと思って人に相続税がかかるようになってきた一方で、贈与に対する各方面の

贈与税の非課税制度は拡充されてきており、必ずしも相続時精算課税制度を利用しなくとも高額な資産の移転が可能になっており、相続時精算課税の恩恵は

薄れてきたような感じもします。

 

相続時精算課税制度の大きな特徴の一つに、贈与者からの贈与について一度相続時精算課税を選択すると後からの贈与についても全てこの制度が適用される

ことになります。通常の贈与には110万円の基礎控除というものがありますが、この特例を適用すると基礎控除の適用が無くなってしまうため、少額の贈与

も全て相続時に贈与時の時価で加算しないといけなくなり、全く相続対策は出来なくなってしまいます。

 

平成15年当時にこの特例を適用して贈与を受けた人で、状況が変って結果的には多くの相続税を払うことになってしまった人もいるかもしれませんね。

  少し前置きが長くなってしまったので、実際に相続時精算課税制度を使うメリット・デメリットは次回に書きたいと思います。